夫が人を斬っても、そこが妻の浮気の現場なら、罪は軽くなる
1880〜1882年(明治13〜15)約2分で読めます

「本夫其妻ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ此限ニ在ラス」原文: 刑法(明治13年太政官布告第36号) 第311条
1880年、明治政府は新しい刑法を作りました。使われはじめたのは1882年のお正月からです。この刑法の353条では、夫のいる女の人が浮気をすると、6か月から2年、牢屋に入れられて働かされます。浮気相手の男も同じです。
でも、妻のいる男が、独身の女の人や愛人と寝ても、罪にはなりません。罰があるのは、夫のいる女の人の浮気だけなんです。ずるくないですか。
もっとすごいのが、311条です。夫が妻の浮気に気づいて、浮気の現場ですぐに妻か相手の男を殺したりケガをさせたりしても、罪が軽くなるんです。条文を読むと、夫が浮気の現場に飛びこむ場面が浮かびます。
どれくらい軽くなるかというと、かなりです。前もって計画していなくても、わざと人を殺すと、普通は無期徒刑になります。一生、島に送られて働かされる刑です。それが浮気の現場なら、刑が2段か3段下がって、9〜11年か6〜8年の懲役になります。一生が、10年くらいになるわけです。
ただし、罪がなくなるわけではありません。それに、条件は「直チニ」、つまりその場ですぐに、です。一晩寝てから現場に戻った夫は、軽くしてもらえません。
浮気をした妻にとっての抜け道もありました。妻の浮気は、夫が訴えないと裁判になりません。夫が黙っていれば、妻も相手の男も牢屋に行かずにすみます。それから、夫が前から妻の浮気を知っていて見逃していた場合は、あとから訴えても無効です。見逃していた夫は、現場で斬っても罪が軽くなりません。
妻を2人持つことは、重婚の罪として禁止されました。でも、愛人は妻ではありません。なので、愛人を何人持っても罪にはならないんです。1899年になっても、愛人を家に住まわせて、妻と同じ家で暮らさせている男がいる、と福沢諭吉はあきれて書いています。
ミニ講義自由民権運動
同じころ、国会を開けと求める自由民権運動が、全国に広がっていました。
出典 15件引用は原文と機械で照合済み
- 刑法(明治13年太政官布告第36号) 公布日 原文
公布:明治13年7月17日
- 同 施行日 原文
施行:明治15年1月1日
- 同 第353条 原文
有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處ス其相姦スル者亦同シ
- 同 第353条第2項 原文
此條ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ告訴ノ効ナシ
- 同 第311条 原文
本夫其妻ノ姦通ヲ覺知シ姦所ニ於テ直チニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫先ニ姦通ヲ縱容シタル者ハ此限ニ在ラス
- 同 第313条 原文
前數條ニ記載シタル宥恕ス可キ罪ハ各本刑ニ照シ二等又ハ三等ヲ減ス
- 同 第354条 原文
配偶者アル者重ネテ婚姻ヲ爲シタル時ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
- 福澤諭吉「女大学評論」(1899) 原文
自家の内に妾を飼うて厚かましくも妻と雑居せしむるか
- 同上(年) 原文
year=1899
- 同 第353条 原文
重禁錮ハ定役ニ服シ
- 同 第294条 原文
故意ヲ以テ人ヲ殺シタル者ハ故殺ノ罪ト爲シ無期徒刑ニ處ス
- 同 第292条 原文
豫メ謀テ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ノ罪ト爲シ死刑ニ處ス
- 同 第17条 原文
徒刑ハ無期有期ヲ分タス島地ニ發遣シ定役ニ服ス
- 同 第67条(刑を下げるときの段) 原文
重罪ノ刑ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス 一 死刑 二 無期徒刑 三 有期徒刑 四 重懲役 五 輕懲役
- 同 第22条 原文
重懲役ハ九年以上十一年以下輕懲役ハ六年以上八年以下ト爲ス


